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ドクターズコラム

ドクターズコラム

2021.12.9

【治療レポート】閉塞性動脈硬化症/60代/男性のケース

血管の老化ともいえる動脈硬化。血管壁が硬く肥厚し狭くなることで血液が十分に供給されなくなり全身で様々な病気を引き起こします。重大なものは脳梗塞や心筋梗塞として良く知られています。これが足に向かう血管に生じたものが(下肢)閉塞性動脈硬化症です。重症になると組織・細胞の壊死により足の一部を切断しなくてはならないこともある深刻な病気です。今回のドクターズコラムは実際に閉塞性動脈硬化症と診断された60代男性を例に初診時の状況や行った治療についてご紹介します。

<目次>
1.初診時の状況
2.行った検査
3.治療内容
4.治療後の経過
5.医師からのアドバイス


初診時の状況

患者さんは十数年来、知人である外科ドクターにかかりつけていました。数年前に足へ向かう血管(動脈)が詰まっていると言われましたが、命に別状はないので大丈夫と言われていました。この頃は、数十メートル歩いただけで両方の足が痛くなるため歩いては休んでを繰り返さなければなりませんでした。買い物に行くと荷物を持って歩く妻についていけずに、休んでいる間においていかれるという状況でした。軽い脳梗塞が疑われたことをきっかけに、かかりつけていたところと別の病院を受診し診断・治療が進んでいくことになります。

行った検査

閉塞性動脈硬化症は、まず脈波・ABI検査で大まかに病気の有無を診断します。ABI値は正常が1.1前後であり、0.9を下回ると(下肢)閉塞性動脈硬化症としてさらに血管の狭窄や閉塞に対する精密検査を進めていきます。精密検査には超音波(エコー)、CT、MRI(MRA)などがあり、実際の血管の形状や血流状態をみていきます。これらの精密検査は単独で行われたり複数を組み合わせて診断が進められます。

この患者さんの脈波・ABI検査は右:0.58、左:0.73という結果であり、両下肢とも閉塞性動脈硬化症であると診断されました。精密検査として複数の検査が行われ治療へとすすむことになりました。ここではMRI(MRA)の画像を示します。

図1:右下肢MRI(MRA)画像
右浅大腿動脈の中間部に完全閉塞病変を認めます。
図2:左下肢MRI(MRA)画像
左浅大腿動脈は根本(起始部)より完全閉塞となっています。

治療内容

左右どちらの下肢動脈も治療難易度の高い完全閉塞でしたが、カテーテル治療に成功しステントが留置されました。

図3:右浅大腿動脈治療前

図4:右浅大腿動脈ステント留置後
図5:左浅大腿動脈治療前
図6:左浅大腿動脈ステント留置後

治療後の経過

カテーテル治療後の脈波・ABI検査は、右:0.87、左:0.97と改善しました。歩いても足の痛みは出なくなり、休まずに長距離を歩くことができるようになりました。治療前は買い物でも妻においていかれましたが、治療後数ヶ月たって登山に行くと妻よりも先に登頂できたそうです。

医師からのアドバイス

足の痛みの多くは関節や筋肉あるいは神経によるものなど整形外科的な病気が原因であることが多いのですが、この患者さんの場合は血管の動脈硬化が原因でした。正確に診断して治療へとつなげることで活動度が大きく広がりました。運動量が増えることは他の生活習慣病の改善につながり将来的な病気の予防効果も期待できます。足の症状が気になる方は血管の検査を受けてみましょう。


院長・医師 藤井 徳幸