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ドクターズコラム

ドクターズコラム

2021.10.6

胸が痛い!気をつけたい症状と病気

体に痛みや違和感をおぼえると「何かの病気では?」と不安になりますが、その場所が胸であればなおさらです。また、痛みが小さかったり、症状が軽かったりすると「病院へ行くべきか」と悩むケースも多いでしょう。この記事では、胸の痛みを感じた時に考えられる病気とどのように行動すればよいかを説明します。

<目次>
1.痛みの種類、痛む場所から病気を予測できる?
2.重大な心臓の病気、血管の病気
3.診断の考え方と進め方
4.医師からのアドバイス


痛みの種類、痛む場所から病気を予測できる?

胸(胸部)に痛みを感じると心臓の病気を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、胸部には心臓の他に肺や胸膜、神経などいくつもの臓器があり、必ずしも心臓の病気によるものとは限りません。どのような病気が疑われるかは、痛みの種類や痛む場所だけでは予測できず、仮に痛みが小さかったとしても重大な心臓の病気や血管の病気の予兆であることも考えられます。胸に痛みや違和感がある時は自分で安易に予測するのではなく、医師の診断を受けて重大な病気ではないか確認することが大切です。

重大な心臓の病気、血管の病気

重大な心臓の病気では、狭心症、心筋梗塞、肺血栓塞栓症、心筋炎、不整脈発作などがあり、血管の病気では、大動脈解離、大動脈瘤などがあります。これらの病気は、時に緊急治療や入院が必要となり、命にかかわることや突然死の可能性もあります。主な症状をまとめました。

<心臓の病気>

狭心症・心筋梗塞

胸部中央から左側にかけて締め付けられるような痛みや圧迫感があり、数分で消失した場合は狭心症が疑われます。首や肩などにも広がるような痛みが現れることもあり、階段を駆け上がるなど、体を動かした時に生じるケースが多いです。これらの痛みがよりひどく、持続時間も長く、冷汗や呼吸困難などのその他の症状を認めた場合は心筋梗塞を疑います。

肺血栓塞栓症

肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まることで起きる病気です。息切れ、胸の痛みなどの症状がみられることがあります。血栓は主に下肢などの静脈内で生じ、血液の流れに乗って心臓を通過して肺に達します。飛行機などで同じ姿勢を長時間続けることが原因発症することでも知られており“エコノミークラス症候群”とも呼ばれます。

心筋炎・不整脈発作

心筋炎は心臓を動かす筋肉(心筋)の細胞が炎症を起こす病気です。炎症を引き起こす主な原因はウイルス感染であることが知られ、多くは風邪ウイルスと同じものです。新型コロナウイルスに感染して心筋炎になる場合もあります。症状は発熱、倦怠感に加えて、心臓の働きが悪くなることで不整脈や心不全などを生じます。

<血管の病気>

大動脈解離

突然激しい痛みが生じ、時間とともに広がっていく場合は大動脈解離が疑われます。全身を巡る血管のうち最も太い動脈を大動脈と言いますが、その構造は高い圧力(血圧)に耐えるため3層(内膜、中膜、外膜)構造となっています。大動脈解離は何らかの原因で内膜、中膜が裂けて血液が内膜と外膜の間に入り込む病気で、血流はその勢いで大動脈の壁を縦方向に裂いていきます。放置すると意識障害や失神などを生じ、命にもかかわります。

大動脈瘤

大動脈の一部が弱くなってコブのようになったものを大動脈瘤と言い、大動脈解離によってコブが生じることもあります。コブが大きくなると破裂し大出血を起こす危険性が高まります。ほとんどの動脈瘤は破裂するまで自覚症状がありませんが、動脈瘤が喉の神経を圧迫することで声がかすれたり、食道を圧迫して食事を飲み込む時にむせたりすることがあり、そのような症状があった場合は注意が必要です。

診断の考え方と進め方

クリニックでは胸の痛みが心臓や血管によるものか、それ以外の肺や胃、食道などによるものかを慎重に診断します。また、手術など緊急の処置が必要であるか、検査を重ねながら治療に取り組めるかどうかを判断します。診断の際は、胸部レントゲン写真・心電図・心エコー・ホルター心電図・血液検査などを行い、病歴聴取なども含めて総合的に判断していきます。必要に応じて医療機器共同使用によるCT検査も行い、入院治療等へとつなげていきます。
さまざまな検査を行っても原因が特定できず、状況に応じて鎮痛薬や安定剤なども使用しながら経過観察することもあります。

医師からのアドバイス

胸の痛みを感じた時には、医療機関を受診して検査を受ける必要があります。そのままにしておいて診断や治療が遅れると、悲しい結果につながる恐れもあります。また症状が軽くても重大な病気でないとは限りません。わずかな症状が病気を診断する手がかりとなることもあります。
自覚症状がないままに病気が進行することもありますので、気になることがあれば、まず循環器内科を受診するのがよいでしょう。緊急性がないこと、重大な病気でないことを確認し、しっかりと検査を進めていく必要があります。


院長・医師 藤井 徳幸