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ドクターズコラム

ドクターズコラム

2021.9.22

ワクチンと心筋炎。不安な方の検査について。

新型コロナワクチンの接種が札幌でも進んでいます。感染や重症化を防ぐ効果があると期待されていますが、一部で、心筋炎や心膜炎になるという報告もあり、不安を感じている人が少なくないかも知れません。この記事ではそもそも心筋炎、心膜炎とはどんな病気か。また、ワクチンとの関係についても説明します。


〈 目次 〉
1.心筋炎、心膜炎とはどんな病気か
2.新型コロナワクチンとの関係
3.不安な場合はどうすればよいか
4.医師からのアドバイス


心筋炎、心膜炎とはどんな病気か

心筋炎は心臓を動かす筋肉(心筋)の細胞が炎症を起こす病気です。炎症を引き起こす主な原因はウイルス感染であることが知られ、多くは風邪ウイルスと同じものです。新型コロナウィルスに感染して心筋炎になる場合もあります。症状は発熱、倦怠感に加えて、心臓の働きが悪くなることで不整脈や心不全などを生じます。

心筋炎には症状が重篤である「劇症型」と呼ばれるものがあり死につながることもあります。初期は軽い症状であっても、胸の異常や極度の頻脈や徐脈に気づいたら早期に医療機関を受診することが重要です。炎症が心臓を包んでいる心膜に生じたものを心膜炎と呼びます。心筋炎と同様に、主な原因はウイルス感染と考えられています。心膜炎は胸の痛み、違和感などの症状が中心ですが、心嚢液が貯留することで心不全と同様の症状がでることもあります。

新型コロナワクチンとの関係

新型コロナウィルスのワクチン接種が先行している海外で、接種後に軽症の心筋症になった事例が報告され、「ワクチンを接種すると心筋症になるのか」という不安が広がっています。これについて、厚生労働省と日本循環器学会がそれぞれワクチンとの関係を次のように説明しています。

新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率は、新型コロナウイルス感染後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率に比較して極めて低い。
新型コロナウイルスワクチン接種後に発症する急性心筋炎と急性心膜炎の大半は軽症である。
新型コロナウイルスワクチン接種による利益は、ワクチン接種後の急性心筋炎と心膜炎の危険性を大幅に上回る。

典型的な症状としてワクチン接種後4日程度の間に、胸の痛みや息切れが出ることが考えられます。症状が現れた場合は医療機関を受診してください。

不安な場合はどうすればよいか

新型コロナワクチンの副反応には、接種部位の痛みのほか、疲労や発熱、筋肉痛など全身性反応が知られています。もし接種後に胸に違和感があった場合、副反応の一症状なのか、心筋炎・心膜炎・胸膜炎などが起こっているかどうかは検査を行なってみなければわかりません。
当クリニックでは血液検査による心筋逸脱酵素(トロポニンT)や炎症マーカー(CRP)、胸部レントゲン写真、心電図、心エコー検査による詳細な心筋・心膜液などの観察で総合的に診断します。
心臓に不安がある患者さんでも、今のところワクチンによる心筋炎や心膜炎のリスクが増加するという報告はないため、ほとんどの場合はワクチンによる効果の方が大きいと考えられます。

医師からのアドバイス

副反応への懸念はありますが、コロナウイルス感染や重症化予防効果を考えると、接種するほうが有益な場合が多いと考えます。接種に不安がある方への説明や、ワクチン接種後の体調不良については診療を行なっていますので、ぜひご相談ください。


院長・医師 藤井 徳幸